金利上昇でローン負担額が増えるリスクがあることを承知で選んだ変動金利の住宅ローン。
「住宅ローン金利が上がり始めた!」と最近のニュースで知り、
「まだまだ大丈夫だろうけど、そろそろ固定金利への借り換えを検討しようかな?」
なんて呑気な考えは持っていませんか?
実は、「一旦金利が上がりはじめると変動から固定への借り換えが難しくなる!」という事実を知っている方はとても少ないです。
借り換えが難しくなる理由は、変動金利が上がった時には固定金利はもっと上がっているからです。
借り換え出来ずに、住宅ローンの金利が上がり続けると、返済苦に陥り、最悪の場合はせっかく購入したマイホームを手放すことになりかねません。
金利が上がったとしても、経済的な余裕がある方は特に対策しなくても大丈夫です。
しかし、将来の不安がある方、子供の教育費などが気になる方は、今このタイミングで住宅ローンの借り換えを検討してみてはいかがでしょうか。
もちろん、借り換えにも多少のリスクはありますが、ポイントさえ押さえておけば、早く借り換えるほどリスクは小さくなります。
そこで、この記事ではファイナンシャルプランナーとして実際にローン相談を受けている私が、「固定金利への借り換え」をテーマに、詳しく解説しています。

変動から固定への借り換えのタイミング


金利が上がってしまってからでは、借り換えが出来ずに手遅れになってしまう可能性があるので注意が必要です。
変動金利は急上昇する可能性がある
金利が上がるときは「じわじわ上がる」姿をイメージしますが、金利の上昇スピードは、ゆるやかとは限りません。
過去の変動金利の動きを見ると、平成3年に過去最高の8.5%に上昇し、その後平成8年までの5年間で2.5%にまで下がっています。
住宅金融支援機構HP:民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)
1年あたりにすると約1.2%ずつ変動したことなので、短期間に大きな変化が起こりうることが分かりますね。
この動きはバブル経済によるものなので、「異常な高金利だった」と考えることもできますが、今の基準金利は真逆の「異常な低金利」の2.475%です。(2018年10月時点)
正常な金利が何%なのかは決まっていませんが、バブル崩壊後の変動金利の平均値が約4%なので、1.5%程度であればいつ上がってもおかしくない状況なので要注意。
日銀が金利の引き上げを容認した
20年間にも及ぶ異常な低金利の時代が終わりを迎えようとしています。
2018年7月に日銀が金利の引き上げの容認を発表したのです。
この発表をカンタンにまとめると以下の内容になります。
- 長期金利の変動は今まで0.1%程度に抑えていたけど、今後は0.2%まで容認します。
- 万が一、急激な金利の上昇があった時は下がるように操作しますので大丈夫です。
- 今後も金融緩和を続けますので低金利が続くことを約束します。
発表の内容では「金利は上がらない」としていますが、実際は発表の翌月にメガバンク3社が一部の住宅ローンを0.05%引き上げることを発表しました。
すぐに大きく金利が動くことは考えづらいですが、0.1%は上昇する可能性が高いです。
まだ小さな変化ですが、これから金利が一気に動くきっかけになる可能性があるため、変動金利の方は注意が必要です。
借りた時の優遇金利に注意する
住宅ローンの規約に反することをしてしまうと、「優遇金利」が打ち切られ、高い金利に変更されてしまう場合があります。
わたしたちが目にする金利は「適用金利」と呼ばれるもので、値下げ後の金利です。
(三菱UFJ銀行HPより抜粋)
上記は2018年10月の三菱UFJ銀行の変動金利の表示で、数字が3つの金利が表記されています。
- 店頭表示金利2.475%(店頭金利)
- 最大年ー1.85%(優遇金利)
- 年0.625%(適用金利)
これは、「定価である店頭金利(2.475%)から優遇金利(1.85%)を値引きして、実際に適用される金利は0.625%ですよ」という意味です。
優遇金利は、借りる人によって優遇幅が変わるのが特徴で「銀行にとって評価の高い人」ほど、たくさん値引きしてもらうことができます。
お得に住宅ローンを組めるので、借りる側にとても優しいサービスなんですが、注意点がひとつ。
返済の滞納があったり、自分が居住せずに第3者に賃貸で貸していたりすると、「規約違反」として優遇金利を取り消されてしまうことがあります。
先ほどの例の場合、今月まで0.625%だったものが、来月から突然定価の2.475%になることだってあり得るのです。

金利が上がってからの借り換えは難しい
「金利が上がったら固定に借り換えればいいや」
そう思っている人は多いですが、金利が上がり始めてから固定金利に借り換えることは、難しいと考えておいた方がイイでしょう。
なぜなら、変動金利が上昇を始める前に、固定金利が上昇してしまうからです。
金利が決まる仕組み
長期固定金利と変動金利は、それぞれ違う指数と連動しています。
- 長期固定金利:長期国債利回りに連動
- 変動金利:短期プライムレート(政策金利)に連動
長期国債金利は、市場の動きを投資家が予想して「これから景気がよく(悪く)なりそうだ」という見込みをもとに変動します。
政策金利は、国(日本銀行)が「景気が悪いなぁ…よし、なんとかしよう!」という、実体経済をもとに変動します。
実態の経済の動きを予測して長期金利が動くため、先に金利が動くのは「固定金利」ということです。
「じゃぁ固定金利が上がり始めてから借り換えたらいいんじゃない?」
確かにその通りです。
しかし、仮に金利が0.1%上昇したときに、それが「一時的なもの」なのか、「今後も上がり続ける」のかという判断は難しいのではないでしょうか。
「金利の上昇は一時的なもので、しばらくしたら金利は下がるだろう」とモタモタしている間に、気づいたら借りかえることが難しいほどに金利が上がってしまいます。
年齢が上がるにつれて借り換えの条件が厳しくなる3つの理由

年齢が高いと借りられるローン年数が短くなる
金融機関が決めている最長の完済年齢は80歳です。なので35年ローンを組む場合は、45歳が限界の年齢です。
しかし、借りることができるからと言って、80歳までのローンを組むことは危険です。
なぜなら、定年後の少ない年金収入の中から住宅ローンの返済をするのが、大きな負担になってしまうからです。
定年後に住宅ローンの支払いを残している場合、年金だけでは生活がまかなえず、子供にローンを引き継いだり、やむを得ず家を手放すケースも多いです。
住宅ローンを「借りる」のと「返す」のとではまた別の話。年金生活になってからもずっと、住宅ローンの返済をしていくことは現実的ではありません。
多額の退職金が見込める方や、すでにまとまった預貯金を持っているのであれば、65歳時点で残債があっても問題はないかもしれません。
しかし、将来の心配がある方は、老後に支払いを残さないような計画が必要です。

健康状態によって、団体信用生命保険への加入が厳しくなる
住宅ローンを借りる時には、団体信用生命保険への加入が必要ですよね。
団体信用生命保険は「生命保険」ですから、加入の際に健康状態を問われます。
もし健康状態が悪ければ加入を断られることがあり、金利が高いタイプでしか借り換えを引き受けてもらえなかったり、最悪の場合は借り換えできない可能性もあります。

ローン残高よりも家の価値が早く減る
住宅ローンの返済は、初めのうちは利息を多く支払うことになり、元本はほとんど減っていきません。
なので、住宅の価値の減り方に対して、ローン残高の方が減少がゆるやかです。
金融機関は、住宅を担保として住宅ローンの審査をしますので、借りられる額は物件の価値によっても変わってきます。
担保=お金を借りた人が返せなくなった時に、代わりに返済に充てられるもの
例:「3000万円を貸してあげるから、その代わり3000万円の価値があるあなたの家を担保にさせてもらいますね」
住宅の価値の減りがあまりにも早い場合や、土地の価格が下落している場合は、ローン残高でそのまま借り換えることができないケースがあります。

固定金利に借り換えできる3つの条件
「借り換え=新規でローンを組みなおす」ということなので、誰でも借り換えできるワケではありません。
もし過去に、難なくローンの審査を通過した人でも、借り換えの時に環境が変わっていれば、審査に通るのが難しくなることもあります。
最低限クリアしておくべき条件は以下の3つです。
- 返済実績が1年以上ある
- 勤続年数が1年以上ある
- 年齢が45歳以下
金融機関から門前払いされることのないように、しっかり押さえておきましょう。
返済実績が1年以上ある
住宅ローンの返済が始まってから、1年以内は借り換えが難しいです。
金融機関は「きちんと返済してくれる人」にお金を貸したいので、返済実績は評価の対象となります。
「10年きちんと返済し続けている人」と、「返済実績3か月の人」とでは、10年返済している人の方が、金融機関から見た時に印象がイイですよね。
最低でも1年の返済実績がれば、問題なく借り換えに応じてくれるでしょう。
当然ですが、過去に滞納があった場合は、借り換えの審査を通過することはかなり難しくなります。

勤続年数が1年以上ある
住宅ローンを初めに組んだ時とは違う会社に転職している場合、勤続年数が大きなポイントとなります。
借り換えは「新規で住宅ローンを組みなおすこと」なので、キチンと返済できる経済基盤が整っていると判断されなければ、審査に通る可能性は低くなります。
一般的には勤続年数3年は欲しいところですが、最低でも転職から1年経っていれば、審査に応じてくれます。

45歳以下であること
変動から固定への借り換えでは、同じ返済期間で借り換えるとなると、毎月の返済金額が増えてしまいます。
そのため、返済期間を延ばすことで毎月の返済の負担を減らすことを考える方も多いです。
住宅ローンには返済期間の最長年齢が各金融機関で定められており、ほとんどの金融機関が返済期間を80歳までとしています。
なので、35年の長期固定金利に借り換えようと思うと、45歳が借り換えのリミットになります。

変動から固定への借り換えは将来のリスクをなくすこと

変動から固定への借り換えは、「利息の軽減によっておトクになる」というモノではありません。
借り換えによって得られるのは、将来起こり得るリスクがなくなることです。
メリットを最大化するか、デメリットを最小化するか
住宅ローンを変動金利で組むということは、「メリットの最大化」を目指すことです。
金利が上がれば支払いは増えるけど、もし上がらなかったらラッキー!という、メリットに焦点を合わせた考え方です。
逆に固定金利は「デメリットの最小化」を目指すこと。
現時点では少し負担は増えるけど、もし金利が上がった時に苦しい思いをしたくない!というデメリットに焦点を合わせています。
- 変動金利:メリットの最大化(得するかもしれないけど、損するかもしれない)
- 固定金利:デメリットの最小化(得することはないけど、損することもない)
どちらが正しいかは人それぞれですが、もしあなたが将来の資金に不安があるのであれば、固定金利でデメリットを最小化した方が安全です。
今の低金利が続いている間はいいかもしれませんが、長い人生の中で金利が上がった途端に、思い描いていた生活が破綻してしまう可能性があります。
将来の見通しを立てて、安心して暮らしていくためにも、デメリットを排除して安心して暮らすことが大事なのではないでしょうか。
固定金利に借り換えると返済額は当然上がります
当然ですが、変動から固定に乗り換えると、金利の差の分だけ返済の負担は大きくなります。
例えば、0.6%の変動金利で3000万円を30年で返済する場合、月々の返済額は91,078円ですが、同じ条件で1.35%の固定に借り換えた場合の月々の返済額は、101,390円になります。
3000万円を30年間で返済 | 変動金利(0.6%) | 固定金利(1.35%) |
月々の返済額 | 91,078円 | 101,390円 |
月々の返済の負担を見ると、やっぱり変動金利がおトクに見えるでしょうし、あなたの家計にとって返済の負担が1万円増えるのは深刻なコトかもしれません。
しかし、大切なのは損か得かではなく、リスクを最小化するという視点です。
もし将来の変動金利が、今の固定金利よりも上がった時、家計に生じる影響は1万円では済みません。
人生で必要な資金は、住宅資金だけではなく、子どもの学費や親の介護、自分たちの老後やリフォーム費用など、様々な資金が必要になります。
上がった利息の支払いのために、子どもに将来やりたいことをさせてあげられなくなったり、自分たちの老後の生活が削られてしまう未来は、誰にとっても避けたいものではないでしょうか。
何かが起きた時のために保険をかけるように、金利が上がった時にも何らかの備えがあった方が安心です。
毎月の返済額の負担も、「将来にわたって安心して暮らすための保険料」だと考えて、金利が上がる前に一度しっかり考えてみてはいかがでしょうか?

家計への影響を最小限にするために
固定金利に借り換えた方がイイとは思っても、家計の負担が増えてしまうことには不安もありますよね。
家計への影響を最小限にするためにも、借り換えの前にはしっかりとした返済シミュレーションを行うことが大切です。
細かいシミュレーションによって、将来の子どもの学費や老後の生活を含めた、今後の人生に必要な資金計画をもとに借り換えのプランを練ることが出来ます。
変動から固定への借り換えによって家計の負担が増えたとしても、家計の出費を見直すことでよりラクに返済が可能になることもあります。
また、住宅ローンは取り扱っている金融機関によって条件や金利が異なります。
全国にはたくさんの金融機関があるため、自分で調べるには時間も手間もかかってしまい、結局どこの金融機関がいいのか分からなくなってしまいます。
そこで全国のすべての金融機関に一括で審査の申し込みができる「住宅本舗の住宅ローン一括審査」というサービスを使うのが最も効率的で確実です。
※最大6社を一括比較(無料)
複数の金融機関に同時に審査を申し込むことができるため、審査が通った中から、最も条件がイイ金融機関に住宅ローンを申し込むことができます。
家計への影響を最小限にするために、シミュレーションした結果から、最も良い条件で借り換えを行うことが大切ですね。
まとめ
変動金利で住宅ローンを組んでいる方の中には、金利が上がる可能性があることを知っている人は多いです。
しかし、「もし金利が上がった時にどう対応するか」についてはほとんどの人が考えていません。
変動から固定への借り換えは、早ければ早いほどリスクは小さくなります。
