教育資金を保険で準備することを考えたとき、普通の人なら学資保険を思い浮かべますよね。
しかし、保険代理店に相談へ行くと、今は学資保険の代わりとして終身保険をすすめられることが珍しくありません。
そこで、教育資金といえば学資保険しか思い浮かばないという人を対象に、なぜ終身保険が学資保険の代わりに活用できるのか、そして、どちらが良いのかという点について解説します。
終身保険が学資保険の代わりとして利用できると言っても、両者にはいろいろな違いがあります。
そのため、その違いを良く理解して選ばないと、お金を増やすどころか大きく減らしてしまう可能性があります。特に終身保険を利用する場合は注意しておきましょう。
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終身保険を学資保険の代わりとして使うことについて
終身保険が学資保険の代わりとして使えると言っても、どんな商品でも良いわけではありません。そこでまず、終身保険が学資保険の代わりとなる理由について解説し、そのうえで、どんな商品を選べば失敗しないかという点について解説します。
終身保険がなぜ、学資保険と同じように使えるの?
終身保険が学資保険の代わりに使える理由は、終身保険も学資保険と同様、貯蓄型の保険だからです。
つまり、払った保険料は掛け捨てになりませんし、商品によって違いはありますが、ある程度の時間が経過してから解約することで、払い込んだ保険料の総額よりも多くのお金が戻ってくる(これを解約返戻金と言います)ようになるからです。
そこで、終身保険に加入して保険料を払い、教育資金としてお金を必要とする時期が来たら解約するという形で利用することで、学資保険の代わりとするのです。
利用する側にとってはお金が増え、必要な時期に学費を用意できるのであれば、どちらでも同じです。そのため、学資保険の代わりとして終身保険をすすめる保険屋さんが増えたのです。
返戻率が高いのは「低解約返戻金型終身保険」
終身保険の中には、解約返戻金の金額を一般的な終身保険の7割程度におさえた「低解約返戻金型終身保険」という商品があります。学資保険の代わりとして使われるのは、基本的にこの商品です。
一般的な終身保険の場合、払い込んだ保険料の総額を解約返戻金が上回るまで30年くらいかかることが珍しくありません。しかし、低解約返戻金型終身保険なら15年程度で上回る商品もあります。
低解約返戻金型終身保険の場合、契約してから短期間で解約すると、一般的な終身保険と比べて少ない解約返戻金しか戻らないようになっていますが、それはペナルティ的な性質の扱いと言えます。そのかわり、条件をクリアしたときのリターンを大きくしているのです。
具体的な低解約返戻金型終身保険の例
オリックス生命の「RISE(ライズ)」という商品は、30歳で300万円の契約をすると、45歳の時点で払い込んだ保険料の総額を上回ります。
子供が0歳のときに契約すれば15歳のときに返戻率が100%を超えるので、たとえば大学入学資金を準備したいのであれば、あと3年くらいそのままにしておくことで、さらに返戻率を上げることができます。
ただし、45歳になるまでの間に解約した場合は、解約返戻金の金額が払い込んだ保険料の総額(図の太い点線)よりも少なくなることが、図を見ればわかるでしょう。こういうリスクを取っているので、一般的な終身保険よりもリターンが高くなっているのです。
外貨建ての商品を勧められたら?
保険代理店で相談すると、教育資金として外貨建ての終身保険をすすめられることがあります。たとえば、メットライフ生命の「USドル建終身保険 ドルスマート」です。
この保険は積立利率の最低保証が年3%となっています。現在の日本の金利を考えれば、3%というのは非常に魅力的に映るのではないでしょうか。
しかし、言うまでもなく外貨建ての保険には為替リスクがあります。教育資金の準備期間はとても長いので、その間に大きく為替相場が変わる可能性は十分、考えられます。
たとえば2000年におけるUSドル円の終値は114.34円でした。2017年の終値は112.61円です。結果だけ見るとほとんど同じですが、この間、もっとも円安になったときは146円程度で、円高になったときは76円程度です。
運が良ければ想定以上の金額になりますが、運が悪ければその逆の結果になります。為替リスクを取ることができるのであればいいですが、確実に貯めることが求められる教育資金の準備には、外貨建ての保険は向いていないと言えるでしょう。
少しでも返戻率を高めるには
終身保険の返戻率を少しでも高めたい場合、保険料の支払い方を工夫することである程度は可能になります。保険料の払い方には月払いのほか、次のような方法があります。
- 一時払い
- 短期払い
- 半年払い
- 年払い
- 全期前納払い
たとえば、保険料を契約時にまとめて支払う一時払いや10年程度の短期間で払う短期払いは、月払いと比べれば保険料の総額は安くなります。それが難しい場合、半年分や1年分だけまとめて払う方法もあります。
ただし、保険料の支払期間を短くすると、生命保険料控除による節税効果が一部、得られなくなりますので注意が必要です。生命保険料控除は保険料を実際に支払った年にしか受けることができませんので、一時払いや短期払いでまとめて払うと、払い終えた翌年以降は生命保険料控除による節税効果が得られないのです。
なお、一時払いが可能なのであれば、それと同じような方法に「全期前納」という払い方があります。これは、契約時に保険料の総額を保険会社に預ける方式で、時期が来たら保険料として充当します。
そのため、生命保険料控除の節税効果も利用することができます。なお、一度預けたお金を自由に引き出すようなことはできませんので、注意してください。
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学資保険の代わりに終身保険を使うことのメリット・デメリット
ここまでは、終身保険がなぜ学資保険の代わりとして利用できるかという点について説明してきましたが、次に、終身保険を学資保険と比べた場合のメリットとデメリットについて解説します。違いはいろいろありますので、単に返戻率だけで比較しないようにしましょう。
終身保険のメリット
いつでも加入できる/加入年齢の制限がない
学資保険の加入は早くても子供の出産予定日から140日前ですが、終身保険はそうした制限がありません。そのため、第2子・第3子と予定しているようなときは、早めに準備することで利回りを高めることができます。
また、学資保険の場合は契約者である親の年齢制限と、被保険者(保険の対象となる人)である子供の年齢制限の2つがあります。親の年齢制限は50歳程度で、子どもは6歳~8歳程度というのが一般的です。しかし、終身保険なら70歳~80歳くらいまで加入することができます。
ただし、保険なので高齢になると、年齢よりも健康状態が原因となって加入できない確率が高くなります。
解約の必要がないときは放置すれば、利回りが高くなる
学資保険の場合は、決められた時期に保険金を受け取ることになります。商品によっては、たとえば中学校入学時や高校入学時に受け取る祝い金を繰り越すことができますが、基本的には決められた時期に受け取ります。
しかし、終身保険はそもそも終身で加入するという前提なので、死亡(または所定の高度障害状態になったとき)する前にお金を受け取るなら、解約して解約返戻金を受け取るという形になるので、時期を自由に決めることができます。
また、教育資金を準備する目的で終身保険に加入しても、貯金だけで足りてしまうこともあるでしょう。
そんな時は終身保険に手をつけずに契約を続けることで、より利回りを高めることができます。このように、受け取る時期を柔軟に延長できるのが終身保険のメリットです。
市場金利の変化に対応できる
学資保険は固定金利商品です。そのため、金利が低いときに契約すると、その後に金利上昇があった場合、他の商品(預金も含む)と比較して不利になることがあります。しかし、終身保険の場合は金利の変化に対応できる商品があります。これを「積立利率変動型終身保険」といいます。
たとえば、三井住友海上あいおい生命の「&ライフ(アンドライフ)」では、次のように積立利率の最低保証水準が変動しています。
- 2011年10月1日~2013年4月1日 年1.75%
- 2013年4月2日~2017年4月1日 年1.25%
- 2017年4月2日~2018年4月1日 年0.50%
新発10年ものの国債利回りの推移を見ると、上記の利率が市場金利に連動して下がっていることがわかります。
2018年5月現在ではゼロに近い水準なので、これからは上がるしかありません。そのため、金利が上がったときに対応できる商品として終身保険を選ぶという考え方があります。
なお、似たような名前の商品で「利率変動型積立終身保険」というものがあります。「アカウント型」とも呼ばれるこの商品は全く違うものなので、間違えないようにしましょう。
注意ポイント
終身保険のデメリット
解約返戻金が払込保険料を上回るのが遅い
一般的な終身保険では、払い込んだ保険料の総額を解約返戻金が上回るまで、かなりの時間がかかります。30年くらいかかってようやく100%ということも珍しくありません。
教育資金は子供が産まれてからだと、15年~18年程度で準備する必要があります。そのため、普通の終身保険では間に合いません。低解約返戻金型終身保険でかろうじてメリットがあるという程度です。
また、学資保険は返戻率が良い商品だと105%を超えるようなものもあります。しかし、終身保険の場合は低解約返戻金型終身保険であってもそこまで到達する商品は少ないので、早めに加入して準備したり、なるべく短期間で払い終えたりするなどの工夫が必要です。
低解約返戻金型終身保険は、解約したときのリスクが高い
低解約返戻金型終身保険の解約返戻金が、普通の終身保険と比較して返戻率が高くなる理由は、早期に解約すると解約返戻金が普通の終身保険と比べて7割程度におさえられているからであることは、すでに説明したとおりです。
それだけリスクがあるからこそ、保険会社は高いリターンを提供できます。でも学資保険の場合にはそうした商品はありません。
日経BP社が運営している「NIKKEI STYLE」に、オリックス生命の「RISE」と明治安田生命保険の「つみたて学資」の解約返戻金を比較したデータが掲載されています。
これを見ると、18歳時の解約返戻金が300万円になるように条件をそろえて比較したところ、契約から10年を経過した時点での解約返戻金率は「つみたて学資」が100.2%なのに対し、「RISE」は69.2%となっています。
経過期間 | つみたて学資 | RISE |
5年経過時 | 95万400円 | 64万9512円 |
98.6% | 66.2% | |
10年経過時 | 193万1600円 | 135万8244円 |
100.2% | 69.2% | |
15年経過時 | 293万8700円 | 297万1224円 |
101.7% | 100.9% | |
18年経過時 | 298万1200円 | 301万9716円 |
103.1% | 102.6% |
契約から10年経過した時点で解約せざるを得なくなった場合、それまでに支払った保険料は1万6351円×12カ月×10年=1,962,120円です。それに対し、解約返戻金として戻ってくるのは135万8244円なので、約60万円の損失が生じます。
そのため、低解約返戻金型終身保険を使うなら、確実に解約しないようにすることが求められます。
教育資金を貯めるなら、学資保険と終身保険のどっちを使うべき?
以上で解説してきたとおり、両者にはメリットとデメリットがあります。
低解約返戻金型終身保険の方が返戻率は良いというのが一般的な理解ではありますが、2018年5月時点での傾向を見る限り、そうとは限らないと言えます。また、低解約返戻金型終身保険の中途解約リスクがとても高いので、安易におすすめできないという点もあります。
そのため、ほぼ中途解約しないで運用できる資金が準備でき、第2子、第3子に備えて早めに準備できるようなときは低解約返戻金型終身保険を活用しても良いですが、保険を活用するなら学資保険にしておくのが無難、ということが言えるでしょう。
なお、インターネットで情報収集をしていると、低解約返戻金型終身保険の方が良いのではないか、という印象を抱くかも知れません。これは、ネットの情報が2018年5月よりも金利の高い時期に書かれた可能性が高いからです。
常に、最新の情報をもとに判断することが大事です。
まとめ
商品を選ぶときはネットで情報収集をする人が多いでしょうが、実は、保険の情報はネットだけでは十分に集められません。保険代理店に行くと専用のソフトで試算してくれますし、ホームページには書いていないようなプランがあることも珍しくありません。
そのため、ネットで情報収集しているだけだと損をする可能性が高いです。
保険代理店で試算してもらえば解約返戻金の金額も正確にわかりますし、複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店に行けば、取り扱っている商品の中から一番良い商品を提案してもらうことができます。
1人で情報収集をして悩むよりも効率が圧倒的にいいので、少しでも良い商品を選びたいのなら乗合代理店を利用するのが良いでしょう。
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