親の車を乗り続けてそのまま譲り受けたり、親の他界によって車を相続するなど、親名義の車を売却するケースは多々あります。
ただ、多くの方は自分以外の名義の車を売却することに抵抗を感じているようです。
それは、「手続きがわからない」というのが大きな理由です。
しかし、親名義の車を売却することは難しいことではありません。
そこで、この記事では親名義の車を売却する際に注意しておきたいポイントをケースごとに解説します。
他人名義の車を売却する前には名義変更が必要
車の名義は、車検証に記載されています。普段ほとんど見る機会がないため、あまり馴染みがないかもしれません。
車の名義は、主に所有者と使用者の2つに分かれています。
名義人の違い
所有者 → 車を購入した時にお金を支払った人の名前
使用者 → 主にその車を乗っている人の名前
所有者は車を買う時にその支払いをした人の名前が記載されます。現金一括で買った場合は、所有者登録をした人の名前になります。
ただ、現金を支払っていなくても、所有者登録で実印を押印した人の名前になります。
車の売却は『所有者』の名義によって手続きが変わってきます。
車を売る時に名義人が『所有者』と同じであれば問題なくスムーズに本人だけで手続きできますが、所有者が本人でない場合は名義を変える手続きが増えます。これが「名義変更」の手続きです。
親であれ親戚であれ、所有者の名義が異なれば他人名義の車になります。
その場合は、いったん名義を変えてからでないと車を売却することはできません。
名義変更の種類
名義変更は主に3つのパターンがあります。
- 移転登録申請
- 変更登録申請
- 抹消登録申請
移転登録申請は、自動車を売却した時に行う手続きのことです。あくまで車が動くことが大前提なので、車検が切れている場合は移転登録申請は対象外となります。
なお、この申請は車検期間が残っている場合に行う必要があります。
一方、変更登録申請は、住所や名前、社名などを変更するときの手続きのことを言います。移転登録と違って基本的にいつでも変更登録が可能です。
他県からの転入などの場合は、ナンバープレートが変わるので車を持ち込む必要が出てきます。
最後の抹消登録申請は名前の通り、自動車を廃車にする時に行う手続きとなります。
- 永久抹消登録
- 一時抹消登録
- 解体届出
- 輸出抹消登録
- 輸出届出
車を完全に使わなくするものから、一時的に使用を停止するパターンまで幅広く定義されています。詳しくは、国土交通省の九州運輸局のページに記載されていますので参考にしてください。
名義変更を依頼する場所
車の名義変更は知識さえあれば自分でもできますが、書類の書き方も難しく、陸運支局の窓口の方もそれほど親切ではありません。知識がない方や不慣れな方はプロにお願いするのが安心で確実です。
ディーラー・買取業者
一番よく利用する機会があるのがディーラーや買取業者です。車を売る時に必ず利用しますよね。
ディーラーや買取業者は直接お店の担当者が手続きに行く場合と、行政書士などを仲介して申請する場合とがあり、手続きの代行費用が大きく変わってくるので見積もり金額が業者によって変わるので注意が必要です。
車屋が直接手続きしてくれる場合は安くなりますが、行政書士など仲介する場合は値段も高くなってしまいます。
行政書士
ディーラーや買取業者が代行する手続きを仲介なしで直接依頼するのが、行政書士への直接依頼するパターンです。
直接依頼すれば値段も安く抑えられると考えてしまいますが、意外にそうでもありません。
ディーラーや買取業者は顧問として担当する行政書士と契約を結んでいることがほとんどです。
そのため、私たち個人が行政書士へ直接依頼しても逆に新規依頼の手数料などがかかってしまい結果として高くなってしまう可能性があります。
直接の知り合いがいない場合は、行政書士への依頼は値段が上がってしまうことが多いので注意が必要です。
親名義の車を名義変更する時の3つのパターンと注意点
他人名義の車を親だけに絞ってより詳しく名義変更手続きのやり方や注意点を解説していきます。親名義の車の名義変更は3つのパターンに分類できます。
- 親が別居・遠方に住んでいる
- 近くに住んでいる
- 死亡・亡くなった場合
必要書類は状況によって変わる
全ての場合で名義変更に必要な書類は変わってきます。全体的に必要になってくる書類は下記の通りです。
自分で依頼するパターンは少し難しいため、ここでは買取業者経由で手続きするための必要書類をベースに紹介します。
- 譲渡証明書
- 印鑑証明書
- 委任状
- 車検証
- 自賠責保険証(通常、車検証に入っている)
あとは細かな条件によって、必要書類が変わってくるので次の項目で詳しく解説していきます。
①親が別居で遠方に住んでいる場合
一人暮らしなどの理由で親と別居中である場合も、必要書類は変わりありません。
- 譲渡証明書
- 印鑑証明書
- 委任状
車検証や自賠責保険証は車検証入れに入っているので、送る必要はありません。
ただ、上記の書類は郵送で送って実印を押してもらったりする必要があるので、事前に買取業者から必要書類をもらって、記入する箇所や押印する場所をしっかりと把握しておきましょう。
譲渡証明書と委任状に有効期限は特にありませんが、印鑑証明書は発行から3ヶ月の有効期間があるので受け渡しまでの時間も計算するようにしておく必要があります。
ポイント
実印の印影がはっきりしていないなど、送り返してもらってから書類に不備があると余計な時間がかかってしまい大変なのであらかじめ説明しておくようにします。
②近くに住んでいる場合
親が近くに住んでいる場合は、手続きが一番かんたんで最速でできます。
- 譲渡証明書
- 印鑑証明書
- 委任状
親が別居中のパターンと同じく、車検証入れは手元にあるので車検証関係はリストには入れていません。
買取業者から書類を預かったら、親の実家で実印を押してもらい、委任状に認印、市役所に印鑑証明書を取りに行ってもらうだけで済みます。
最短で2日もあれば書類が揃いますし、書類に不備があってもすぐに差し替えもできるので名義変更の手続き自体は一番楽にできます。
③親が死亡・亡くなった場合
親が亡くなった場合の車の名義変更は少し手間がかかります。理由は、車の所有者本人がいないためです。
- 譲渡証明書
- 印鑑証明書
- 委任状
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本(除籍謄本)
個々の状況によって変わってくるので、詳しくはお住いの管轄陸運支局に問い合わせるようにしてください。
故人の車を売却する時の手続き
故人の車を売却する時の手続きは先に説明した通り、少し複雑です。その注意点を4つに分けて詳しく解説していきます。
相続するときは贈与税に注意が必要
故人から何かしらの遺産相続を受けている場合は贈与税がかかってきますが、車も同様にある基準を超えると贈与税がかかってきます。
目安としては、車の評価額が110万円を超えている場合です。
110万円以上の価値があることになると、その車には贈与税がかかります。
車の他に現金を受け取っている場合は、その合計額が110万円を超えると贈与税の対象範囲となります。
110万円を超えないように査定額が低い業者を選ぶ、所有者をあえて親の名義のままにして使用者としてその車を使うことで、贈与税の対象から外れることができます。
所有者をそのままにする場合は、自動車保険の対象になるかどうかをあらかじめチェックしておくようにしてください。
駐車場に放置している車は早めの売却が吉
親が亡くなって、乗らなくなった車は放置しておくといろいろと無駄なお金がかかってきます。
実家住まいなど駐車場にお金がかからない場合は、駐車場代は気にする必要はありませんが、維持費はかかってきます。
駐車料金がかからないからと言って、そのままにしておくといいことはありません。
- 自動車税がかかる
- バッテリーのトラブルになるリスク
- 中古車としての価値が下がる
自動車税について
当たり前ですが、車は持っているだけでお金がかかってきます。動かさなければガソリン代などはかかりませんが、動かさなくても自動車税は容赦なくかかります。
一般的な車は年払い単位で請求されるので、毎年5月に一括で支払うことになります。
一括で払っていても、使っていなければ売却・処分することで月単位で自動車税は還付金を受け取ることができます。
つまり、早く売却すればその分支払ったお金が多めに返ってくるということになります。
バッテリートラブルについて
駐車場に車を乗らず放置していると、エンジンをかけないためバッテリーが劣化しやすくなります。車は動かないと、壊れにくいというイメージがありますが逆です。
動いていない車ほど故障のリスクは上がります。
パソコンでも同じですが、ずっと使っていないとバッテリーがへたってしまってバッテリーが死んでしまうことがあります。
車も同じでエンジンをかけずに放置しておくと、バッテリーが劣化し、エンジンがかからなくなってしまいます。
放置しておく場合でも、1週間に1度でも定期的にエンジンをかけて数分アイドリングしているだけでバッテリーの劣化は防ぐことができます。
中古車としての価値について
一番の問題は、中古車としての価値が下がることにあります。中古車は1台1台状態が違うので、あなたの乗っている車と同じ車はありません。
1日ごとに相場価格は変動するため、売却を考えているなら早めに決める方が値段は高くなりやすいのです。
乗らないなら、早めの売却を検討する方が査定価格の面では得になります。
車検切れが近い場合は切れるまでに判断を
通常、車は2年に1回車検を受ける義務があります。
車検を通したばかりで査定に出しても査定価格が大幅にアップすることはありませんが、車検の残り期間が切れてしまうと売却の時にレッカー代がかかったり何かと面倒になります。
査定価格が下がることはもちろん、別途お金がかかってくる可能性があるため、車検の時期が近い場合は早めに売却か車検に通すかを判断する必要があります。
廃車レベルの車は専門業者へ依頼
車自体が古くて値段がつきそうにない場合は、普通の買取業者へ査定を依頼しても拒否されることが多いです。
一括査定で査定を依頼しても、高年式・過走行の車の場合は査定自体を受けてくれないケースが多く、売りたくても売れないことになってしまいます。
そんなときは、事故車や不動車を専門に買取をしている業者へ査定を依頼することで、値段がつく可能性が上がります。
一括査定では値段がつかなった車はこちらの専門業者へ依頼すれば、スクラップでお金がかかることもなく逆に値段がつくこともあります。
自動車保険の変更手続きも忘れずに
親名義の車を売却するとき、車自体の名義変更は誰でも気づきますが、案外忘れやすいのが自動車保険(任意保険)のことです。
名義変更については、買取業者で面倒を見てくれますが、依頼する業者によっては任意保険のことまでは面倒を見てくれないこともあります。
自動車保険の変更手続きは自分ですることの方が多いので、忘れないように覚えておきましょう。
任意保険の手続きは気づかれないことも
任意保険の手続きを忘れてしまうパターンは、1つだけです。それは、「自動車保険を依頼する業者で加入していない場合」です。
依頼する業者で一緒に自動車保険も加入していれば、保険の担当者が手続きをその場でしてくれますが、他社で加入している場合は注意が必要になってきます。
他社で加入している場合は依頼する買取業者では気づいてくれないこともあります。
気の利く営業マンであれば、教えてくれることもありますが、他社で加入している場合はあくまで自分で管理する癖をつけておきましょう。
万が一できていなくても、その業者のせいにすることはできないからです。
親が別居している場合は手続きに時間がかかる
任意保険の手続きは、車自体の名義変更と違い時間が命です。
保険期間が過ぎてしまうと、その車の保険自体が失効となってしまいます。
そのため、手続きには細心の注意を払う必要があります。
親が別居で遠方に住んでいる場合は、書類の郵送に通常の倍近い時間がかかります。
任意保険の有効期限を確認して、少なくとも1週間以上は時間の猶予を見て動くようにしてください。
手続きついでに保険の見直しを考える
名義変更で任意保険の手続きをする時は、日頃じっくり契約内容を見ないあなたにとっては1つの見直しのチャンスになります。
何気なく毎年電話でうなづいて更新をしている人がほとんどだと思いますが、意外に自動車保険が値段を下げることができます。
東京海上や損保ジャパンなどの損保会社系の任意保険は、保険金額も高めに設定されていますが、最近流行りのダイレクト型のネット保険なら保険金額が驚くほど安くなる可能性があります。
私も以前に東京海上からダイレクト型で有名なソニー損保に保険を見直したとき、年間の保険の支払い金額が2万円ほど安くできた経験があります。
自動車保険も一括で無料見積もりがとれるので、この機会に見直してみてはいかがですか?
時間もかからず依頼できておすすめです。
まとめ
親名義の車を中心に他人名義の車を売却する時の方法と注意点をまとめました。時期やポイントさえちゃんとおさえておけば、そんなに難しい手続きではありません。
どの場合にしても、使っていない・乗っていない車は価値が下がる前に売却することが一番です。
数ヶ月たつだけで、中古車の相場価格は10万円ほど下がってしまうこともあります。今お乗りの車がモデルチェンジになってしまうと、さらに値下がりしてしまいます。
どうせ売るなら、少しでも高く売れる方がいいですよね。
買取業者をいくつも回るのは時間と体力的に効率が悪いので、私は無料で数分あればできる一括査定の利用をおすすめします。