



ブラック企業は退職する際でも、有給を簡単には使わせてくれません。
そのため、多くの人がブラック企業から転職できるという事実だけで満足してしまい、有給の消化を諦めてしまいます。
でも、ブラック企業を辞めようとしているあなたも、最後くらいはしっかりと有給消化してから次の職場で働きたいですよね?
私はブラック企業に在職中、一度も有給を使用したことがありませんでしたが、多くの有給を消化してから転職することができました。
実はしっかりと対策を練ればブラック企業でも有給を消化してから転職することができます。
この記事では、私がブラック企業で有給を消化して転職した経験を元に、
ここを押さえたい
- 有給を申請するまでの正しい流れ
- 有給消化に当たってポイント(注意点)
- 有給が拒否された場合の対処法
について解説します。
これらをしっかりと押さえて、事前に対策を考えておくことで、ブラック企業でも有給を消化してから転職できる可能性はかなり高まります。
ブラック企業で有給消化してから転職するのは難しい?

結論から言うと、ブラック企業で有給を消化してから転職するのは難しいです。
ブラック企業において有給消化が難しいのはなんとなくイメージできると思いますが、どの程度難しいのかを認識しておく必要があります。
ここでは、
- 一般的な企業において、転職の際に有給を完全消化できる人の割合・平均消化日数
- 私の働いていたブラック企業のケース
についても紹介します。
ブラック企業は転職に伴う退職時でも有給を使えない?
ブラック企業では、在職中に使用できなかった有給が退職時に使える可能性は相当低いです。
というのも、サービス残業と言う名のタダ働きを労働者に強制するようなブラック企業が「休んでいても給料が出る有給」を認めるとは考え難いからです。
ブラック企業は最後までブラック企業です。
また、これは良くある話ですが、ブラック企業にはそもそも有給という概念がないケースも多いです。
なので、退職時だからと言ってブラック企業でも有給をとれるのでは?という甘い考えは即刻捨ててしまう必要があります。
ブラック企業は例外なく労働者の権利を奪うということを常に認識しておきましょう。
転職者の有給消化の実態とは?
日本においては、ブラック企業でない一般の企業でも有給を完全に消化してから転職することは難しいのが現状です。
マイナビが転職経験のある20~39歳の113人に「退職する時、残っていた有給休暇はすべて消化したか?」を尋ねたアンケートでは、47.8%の人が有給を完全消化したと答えています。
アンケートの対象者はホワイト企業・ブラック企業の人が混在していることから、一般的な企業においても半分くらいの人は有給の完全消化を諦めているという実態がわかります。
退職する時、残っていた有給休暇はすべて消化しましたか?
同じアンケートで「退職することを会社に伝えてから消化した有給休暇の日数」についても調査しています。
会社に「退職する」と伝えてから、有給休暇を何日消化しましたか?
この調査では退職時の有給消化の平均日数は、約8日となっています。
この調査結果の興味深い点は、一番多い回答が0~4日であったことです。
約半数弱の転職者はほとんど有給を消化することなく、転職しているということがわかります。

【参考】私が働いていたブラック企業の有給取得の場合
私が働いていたブラック企業では、在職中はもちろんのこと、退職時においても有給消化は認められていませんでした。
ブラック企業なので退職者は良く出るのですが、従順な退職者は退職日まできっちりと働かせられていたのを良く覚えています。
やはり、ブラック企業から抜け出せる嬉しさで、有給消化などどうでも良くなっている人がほとんででした。

私はこうして有給を申請した!有給申請までの基本的な流れ

ここでは有給申請までの基本的な流れを説明します。
ブラック企業の場合は上手くいかないケースが多いと想定されますが、基本的な有給申請までの流れを把握しておくことも大切です。

有給残日数、次の職場の入社日、要勤務日数を把握する
退職時に有給消化するためには、
- 自分の有給は残り何日あるのか?(有給残日数)
- 次の職場の入社日はいつか?
- 今の会社であと何日勤務しなければならないか?(要勤務日数)
この3点をまず押さえる必要があります。
なぜなら、退職日から導き出される要勤務日数と有給残日数から逆算して、有給消化プランを立てる必要があるからです。
例えば、有給残日数が10日、要勤務日数が20日であれば、退職までに2日に1回のペースで有給を使えば完全消化できる。
というように計画を立てます。
私のケース
私の場合は退職を決意した段階で、
有給残日数:30日、要勤務日数:25日
有給の残日数>要勤務日数でしたので、有給の完全消化は諦めて最大限有給を消化することを狙いました。
退職日の決定と有給消化日の調整を行う
有給残日数・次の職場の入社日・要勤務日数の3点を把握したら、次は退職日を決定し、どのように有給を使用して退職するかを会社と調整をします。
退職日については、一般的には次の職場の入職日が決まっている場合は、入職日の前日が退職日になります。
もし次の職場の入職日が決まっていない場合は、最大限有給を消化できるように日程にゆとりをもって退職日を設定すれば大丈夫です。
有給消化日は、自分の中である程度の計画を立てておいて、それをもとに職場と相談して決める形が理想的です。
先ほどと同じく、有給残日数が10日、要勤務日数が20日の場合で考えてみます。
この場合、一月のうち10日間は勤務し、残りの10日は有給を消化するというプランになります。
上記のケースの場合、有給の消化の仕方は
- 月の前半で10日間働いて、後半の10日は有給消化する方法
- 出勤と有給を交えて合計10日間の有給を消化する方法
など、色々な有給の取り方が考えられます。
ここでは、会社のことを配慮しつつ(フリでもかまいません)、あまり有給の取り方にはこだわらずにとにかく有給消化することを第一に考え、スケジュール調整をしましょう。
相手はブラック企業なので、一筋縄ではいかないかもしれませんが、まずは話し合いからスタートします。
退職願を提出すると同時に有給の申請をする
退職日が決定し有給消化のスケジュール調整が終わったら、退職願の提出と同時に有給の申請をします。
退職の意思表示は、口頭では後日揉めるケースが考えられるので、必ず退職願を提出しておく必要があります。
退職願と有給の申請書類は必ず証拠としてコピーをとっておきましょう。

【重要】有給消化に当たってのポイント

有給申請までの基本的な流れは上記の通りです。
ここでは、私が実際にブラック企業で有給を消化してから転職する際に大切だと思ったポイントを紹介します。
有給消化に対するスタンスを固めておく
有給消化に対するスタンスとは、自分はどれだけ有給を消化したいかを明らかにすることです。
具体的には、
- 会社とどれだけ揉めても強行突破で有給を完全消化する
- 会社と揉めるくらいなら有給はきっぱり諦める
- 上記の中間をとり、若干揉めつつも可能な限り有給を消化する
といったスタンスが考えられます。
なぜスタンスが大切かと言うと、ブラック企業においては「なんとなく有給とれればいいな~」程度の軽い気持ちでは有給消化は望めないからです。
また、絶対に有給を消化したい場合は、会社とどれだけ揉めても有給を使うという強い気持ちがないと心が折れてしまう可能性が高いです。
そのため、
- 自分はどれだけ有給を使いたい気持ちがあるのか
- たとえ会社と争ってでも有給を使う決意があるのか
このあたりの気持ちを固めてから有給消化に挑む必要があります。
もちろん、理想は何があっても有給を消化するという熱い気持ちが欲しいところですが、ブラック企業との争いはかなり消耗するので、自分にふさわしいスタンスで挑みましょう。

可能な限り退職の意思表示は早めにする
有給を少しでも多く消化するためには、退職の意思表示は早めにしておくことが大切です。
当然ですが、退職までに出勤しなければならない日数が多ければ多いほど、有給を使える可能性は高まります。
例えば、15日の有給がある場合で
- 退職まで三ヶ月あり、そのうちの15日間の有給をとる
- 退職まで一ヶ月しかない状況で、15日間の有給をとる
上記の二つのケースを比べると、後者の退職まで一ヶ月しかない状況で有給を15日取得したいと思っても、断られる可能性が高いのは理解できますよね。
一方、退職まで三ヶ月ある場合、そのうち15日間の有給取得であれば、なんとか交渉次第でうまくいく可能性があります。
ちなみに私は前の職場から「もっと早く退職することを言ってくれれば有給を使わせてあげたのに」と、何度も言われました。

有給申請の証拠は必ず残しておく
相手がブラック企業の場合、有給を申請しても有給分の賃金が支払われる保証はないので、有給申請の証拠は一式残しておく必要があります。
前述したとおり、有給の申請用紙のコピーを取っておけば大丈夫です。
有給を使用する旨を口頭でも伝えてある場合は、その音声の録音データがあればさらに心強い証拠となります。
もし有給分の賃金が未払いであった場合は、まずは労働基準監督署に相談するのが一番確実な方法です。

引継ぎは完璧に済ませるよう段取りをつける
有給を消化したい場合、引き継ぎを完璧に済ませておくことが効果的な場合があります。
というのも、引継ぎがなされていないことを理由に、有給の使用を認めないブラック企業が存在するからです。
ブラック企業が有給を拒否する理由をあらかじめ取り除いておくために、引継ぎは可能な限りしっかりとしておきましょう。
そのためにも、やはり早い段階で退職の意思表示をしておくことが重要になってきます。
参考
いわゆる「引継ぎ」ができない場合でも有給は使用できます。この問題は後ほど取り上げます。
私が考えた有給申請を拒否された場合の4つの対処法

ここまで、
- 有給申請までの流れ
- 有給消化に当たってのポイント
を見てきました。
ですが、上記内容を忠実に実践してもブラック企業が有給の消化を認めない可能性は十分にあります。
そこで次は、有給申請を拒否された場合の対処法を4つ紹介します。
私のケース
退職願を出した時点で、
有給残日数:30日、要勤務日数:22日
でしたが、出勤しなければならない22日のうち有給を15日消化することができました。

断られない理由をでっちあげる
まずは第一ステップとして、有給申請を断られないような申請理由を適当にでっち上げる方法です。
相手がブラック企業なので大抵はうまくいかないと思いますが、まずはこの方法で相手の出方を伺います。
私の場合は、転職先が以前の職場とかなり離れていたので、引っ越しをすることにして、有給を消化して物件探しや引っ越しの準備をしなければならないということにしました。
さすが相手はブラック企業。「引越しなど数日あれば十分だ!」と言われてしまいました・・・
それでも最終的には「引っ越しや他にもやることがたくさんある」という理由で半ば無理やり有給を取得できたので良かったです。
他にも、資格取得の必要性がある等の理由も使えるかもしれませんね。

労働基準監督署の存在をちらつかせる
有給申請が拒否された場合、一番効果的な対処法は労働基準監督署の存在をちらつかせることです。
有給の申請が拒否されたら、「労働基準監督署に確認させて頂きます」と言うだけでOKです。
ブラック企業も有給の申請を認めないことは違法であることは知っているので、上記の方法をとると有給の使用を認める可能性がかなり高いです。
もし、労働基準監督署の名前を出しても有給の申請を認めない場合は、「有給申請を拒否された事実を労働基準監督署に申告する」と会社に伝えましょう。
これでも効果がない場合は、完全に違法なので労働基準監督署に介入を依頼する必要性が出てきます。

退職日を延期する
有給残日数が要勤務日数より多い場合は、退職日を延期することで有給消化日数を増やすことが可能になるケースがあります。
私のケース
私は退職願を出した時点で、
有給残日数:30日、要勤務日数:22日でした。
なんとか要勤務日数22日のうち有給を15日消化することができましたが、15日は有給を捨てたことになります。
私が有給を完全に消化するためには、退職日を一か月延期する必要がありました。
そうすることで、残りの15日の有給も消化することが可能でした。
退職日は次の職場の入職日に左右されるため、退職日を延長すれば有給を消化できそうな場合は、転職先の会社に入社日をずらせないか確認をとる必要があります。

強行突破する
どうしても有給を消化したいが、有給の使用が認められないときの最終手段が強行突破です。
つまり、退職願を出し終えた日以降に「退職日までは有給を消化するので出勤しません」と有給の申請を一方的に行い、その日以降は出勤しない方法です。
この方法をとるにあたって、
- 有給を申請したという客観的な証拠(書面、音声)を確実に残しておくこと
- 有給申請が認められずに欠勤扱いになる可能性があること
という点を押さえておく必要があります。
万が一有給の申請が認められていなくても、有給を申請したという客観的な証拠さえあれば、争った場合労働者が不利になることはありません。
強行突破のメリットは有給消化を巡って無駄な時間を費やさずに済む点で、デメリットは揉めた際に自分で対応する必要があるという点です。

こういう場合どうする?

ブラック企業で有給を消化して転職しようとすると、色々なトラブルや疑問に直面します。
有給申請が拒否された場合の対処法をいくつか紹介しましたが、その他にも参考になると思われる質問にお答えします。
よくある代表的なものを取り上げますので、参考にしていただければと思います。
有給分の賃金が支払われない場合は?
有給の申請をしていても、後日有給分の賃金が支払われていないことが発覚した場合は労働基準監督署に相談しましょう。
その際、以下の書類が必要になります。
- 有給を申請したことが分かる証拠
- 該当月の給与明細
労働基準監督署から職場に確認をしてもらえる場合は依頼すればOKです。
労働基準監督署がすぐに動いてくれない場合など、状況によっては対処法を教えてもらい自分で必要な手続きをとる必要が出てくるケースもあります。

時季変更権を主張されたら?
時季変更権は退職時の有給消化に対して会社側は主張することはできません。
時季変更権とは労働者の有給の申し出の時期をずらすことができる権利のことですが、退職時の有給は時期をずらすことが不可能なため、会社側は時季変更権を使用することはできません。
ですが、ブラック企業は労働者が無知だと思って平気で退職時の有給休暇に対しても時季変更権を主張してきます。
私も時季変更権があるので、有給は使えないと言われましたが、そこは冷静に対処しておきました。

十分な引継ぎ期間がない場合は?
もし十分な引き継ぎ期間がない場合でも有給を消化することは可能です。
実際に私は、有給を使用しようとしたところ、「引き継ぎもしていないのに有給を使うなどあり得ない」と言われました。
そこで、労働基準監督署の相談コーナーに相談したところ、
引き継ぎに関しては、書類一枚でも良いので書類の位置やファイルの場所などをわかるように明記しておけば、それだけで十分な引き継ぎになる
との回答が得られました。
一見、「引き継ぎ」というと、「後任の担当が自分の仕事をできるようになること」をイメージしがちですが、実はそれは会社側が作り出した引き継ぎの概念に過ぎないとの見方もできます。

有給の買取を提案するのもあり?
色々な対処法を試しても、中々有給の申請が認めれない場合は、有給の買い取りを提案するのも一つの手です。
つまり、有給を使用せずに退職日まで出勤する代わりに、使用しなかった有給の日数分だけ給与をもらうと言う取引です。
あまり知られていないかもしれませんが、有給の買い取りを行なっている企業も多いです。
私も有給の買い取りを提案してみましたが、相手も意外と乗り気でした。
ですが、私の場合は
- 私の会社では有給買い取りの前例がなかったこと
- 有給買取分の給与が本当に支払われるか心配だった
ことから、有給の買い取りには至りませんでした。

まとめ
ブラック企業で有給を取得してから転職することは簡単ではありません。
私はブラック企業と有給消化をめぐり相当揉めましたが、粘り強く毎日のように会社と話し合いを続けることで、なんとか有給を消化することができました。
ブラック企業をやめる際に有給を取得することにこだわった理由は、「有給を消化してから退職した」という前例を作りたかったからです。
有給を消化してから転職したという前例を作ることで、次に私が働いていたブラック企業をやめる人が有給を取得できる可能性が生まれます。
ブラック企業で働く労働者がきちんと自身の権利を主張し、ブラック企業が違法行為を行えないようにしていくことが重要だと考えます。