前職のときに積立てていた企業型の確定拠出年金を放置していませんか?
実は、確定拠出年金は、中途退職したときは消滅するのではなく、あなたが受け取るお金として残り続けています。
残高のある預金通帳がなくなったら紛失の手続きしませんか?確定拠出年金もそれと同じことなんです。
中途退職したとしても、確定拠出年金は手続きをすれば、引き出すことができたり、金融機関に移して投資運用することができるのに、「忘れていた」とか「手続きが面倒」と言う理由で放置している方はたくさんいます。
しかし、企業型確定拠出年金として積み立てていたお金を自分の資産に戻す手続きは決して難しいものではありません。それは「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があるからです。
そこで、この記事では、放置している確定拠出年金の扱い方法や、一番得する移換方法を詳しく解説していきます。
統計(PDF)iDeCoの加入等の概況(国民年金基金連合会)
中途退職後の確定拠出年金で選択できる3つの手続き
中途退職した会社の確定拠出年金は、現在の状況によって選択できる手続きが異なります。
現金としてすぐに引き出すこともできますが、それにはいくつかの条件があります。一方で、そのまま放置していると手数料だけが徴収され続け、60歳になっても引き出せない状況となってしまいます。
すぐに現金化できないときは、金融機関に移換するという方法もあります。
まずは、あなたが選択できる手続きの種類と条件などを確認していきましょう。
脱退一時金を受け取る
積み立てた確定拠出年金を現金化するお金のことを「脱退一時金」といいます。
脱退一時金を受け取るには、法律に定める条件をすべて満たす必要があります。
脱退一時金が受取れる条件
- 再就職した会社が、企業型確定拠出年金を実施していない
- 確定拠出年金の残高が1.5万円以下
- 中途退職日の翌月から起算して6カ月を経過していない
条件を満たす場合の手続き方法
条件を満たす場合には、退職した旧勤務先に手続きを問い合わせます。
ただし、問い合わせしにくい場合も少なくないと思いますので、そういったときには運用管理機関に直接問い合わせをしてみてください。
手続きの内容は、「脱退一時金裁定請求書」と「本人確認書類」を提出することになります(運用管理機関ごとに異なる場合あり)。
運用管理機関は何社もあり、前職の会社がどこと契約しているのか調べなければいけません。
「確定拠出年金企業型 資格喪失時のお手続きのご案内」書面が手元にあれば、紙面上に記載があります。
また、以下のサイトで運用管理機関の一覧があります。
メリットとデメリット
脱退一時金を受け取るメリットとしては、すぐに現金を受け取りができる点です。
また、1.5万円以下と少額なので年金として管理し続けるよりは、確定拠出年金を一旦清算しておくことはメリットになります。
一方でデメリットは、将来の生活費の足しがなくなると言う点です。
確定拠出年金は60歳以降の生活費を補填するための退職金に代わるものです。
退職金がたくさんもらえる会社に転職した場合には問題は解消されますが、そうではない場合には、60歳以降は公的年金だけで生活しなければならず、生活費の不足が生じた場合は、それを補わなければいけない問題が付きまといます。
また、「再就職をしてから給料は下がったのに税金は上がった!」という方はいませんか?
もし同じような状況であれば、前職のときは、確定拠出年金による所得税などの節税効果があったのに、再就職して確定拠出年金をやっていないために減税となっていないことも1つの原因です。
確定拠出年金の保険料として控除された額は、課税される額から差し引かれて税金等が計算されるため、非常に節税効果が高いです。
将来の生活費のために今から対応したいとき、節税効果を受けたいとき、こんなときは脱退はせずiDecoに移換することを検討してみてください。
このまま放置する
確定拠出年金をこのまま何も手続きせずに、放置することもできますが、おすすめできません。
なぜなら、放置をするメリットは「手続きをしなくてもよい」ぐらいで、デメリットはたくさんあるからです
- 6か月経過後、自動で別口座に移換される
- 放置していても手数料は自動で徴収される
- 60歳になっても受け取れない(加入期間に加算されない)
では具体的に解説します。
6か月経過後、自動で別口座に移換される
退職日の翌月から数えて6ヶ月以内に移換の手続きを行わない場合には、積み立てた確定拠出年金は、自動的に国民年金基金連合会に移換されます。
国民年金基金連合会とは、確定拠出年金を管理している機関です。そこでまとめて管理されることになります。
月数の数え方ですが、例えば、5月10日に退職した場合、その翌月である6月から6か月後である11月末までに手続きをしないと12月に移管されます。
移換された場合でも、手続きをすれば、国民年金基金連合会の管理下から移すことはできますが、移換するための手数料が余計に必要となってしまいます。
- 6か月以内に手続き:金融機関への移管手続き手数料
- 6か月経過後に手続き:国民年金基金連合会への移管手続き手数料 + 金融機関への移管手続き手数料
放置していても手数料は自動で徴収される
確定拠出年金は毎月手数料がかかります。
企業型の確定拠出年金のときは、会社が手数料を負担してくれていたのですが、退職をした場合には、手数料は自分で負担することになります。
手数料は金融機関ごとに異なり、最も安いところを選ぶのがポイントとなります。(金融機関ごとの手数料比較は、あとで解説します)
確定拠出年金の手数料は、放置していても積み立てた資産の中から、自動で毎月徴収されることになります。
銀行預金口座であれば、預けている(放置している)だけであれば減っていかないのですが、確定拠出年金は放置していると毎月減っています。
60歳になっても受け取れない(加入期間に加算されない)
確定拠出年金は、脱退一時金を受け取る場合を除いて、60歳になった時点で年金の受け取りが開始されます。
ただし、60歳になっても加入期間が10年未満のときは受け取ることができません。
その加入期間ですが、放置して国民年金基金連合会で管理されている間は、カウントされません。
10年加入していなければ受け取れないわけではなく、年齢が繰り上げされるルールです。
加入期間 | 受取ができる年齢 |
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1か月以上 | 65歳 |
公的な年金の受け取り年齢を受け取るのは65歳からです。この年齢は、これからどんどん引き上げられて70歳になる可能性もあります。
また、60歳で定年をしたときは無収入になりますし、再雇用となったときでも、給料の大幅減額は避けられません。
そんなときに、少しでも収入源を補うことができる確定拠出年金なので、65歳より前に受け取れることは助かりますよね。
iDeco(個人型確定拠出年金)へ移換する
中途退職後の確定拠出年金の手続き3つ目として、iDeco(個人型確定拠出年金)への移換があり、この方法が最もお得な方法です。
iDecoとは、自分自身で確定拠出年金を運用するものです。
退職した会社でやっていた確定拠出年金は、会社が運用する金融機関を選び、積立金は給料から天引きされていました。
iDecoの場合には、運用する会社を自分で選択し、積立金は自分の銀行口座から引落となります。
自分で会社を選ぶとなると難しそうなのですが、ポイントを押さえれば簡単です。
退職後はiDeco(個人型確定拠出年金)への移管がおすすめの3つの理由
脱退一時金は条件付きで選択できる、放置はデメリットが多すぎるのでおすすめできないという結論でした。
そのため、iDecoへの移換することが、あなたにとってもお得になります。
その理由を3つ紹介します。
定年後に年金として受け取ることができる
iDeco(個人型確定拠出年金)は、定年後の不足するお金を用意するための制度として非常に優れています。
メディアでも盛んに未来の公的年金について不安視する声が取り上げられていますが、間違いない事実です。
これまでは老人を現役世代の数人で支えている状態でしたが、これからは老人が増え現役世代が減りますので、公的年金が難しい状況にあることは容易に想像できます。
政府は対応策として、公的年金の受け取りができる年齢を徐々に上げていくことでしょう。今の30代40代の現役世代が、定年する頃には年金が70歳から受け取りになっている可能性もあります。
どうしますか?
60歳で一旦定年して再雇用されたとしても、かなり給料は減額されます。
必要な生活費よりも給料が少ないこともありますので、その差額は自分で用意しなければなりません。
また、70歳から公的年金を受け取ったとしても、公的年金だけでは生活費は足りません。その差額も用意する必要があります。
再雇用時の給料や公的年金では足りないお金への対策として、自分で用意ができるiDecoは優れた制度の1つです。
所得税控除により所得税が安くなる
iDeco(個人型確定拠出年金)では、前職で積立てた確定拠出年金を移換した後に、プラスして新たに毎月23,000円まで積立てることができます。
積立てたお金は、全額が所得控除として控除することができますので、所得税の還付額が多くなります。
例示として、節税額をシュミレーションした結果は次の通りです。
想定例 | 節税額 |
年収360万円・毎月1.5万円iDeco積立 | 年間27,000円節税 |
年収500万円・毎月2.3万円iDeco積立 | 年間55,000円節税 |
年収700万円・毎月2.3万円iDeco積立 | 年間82,000円節税 |
これは1年間の節税額なので、定年までこのままiDecoを続ければ、かなり大きな金額の税金が節税できるか分かっていただけるでしょうか。
メモ
よくある意見として「節税額としては魅力的だけど投資が怖い。節税額以上に投資結果がマイナスになるのでは?」ということがあります。
確かに投資をすると節税額以上にマイナスになることがあります。
しかし、iDecoはリスクのある投資商品だけではなく、定期預金などリスクのない商品もあります。投資の損失を出したくないときは定期預金で積立てて、節税のメリットだけ授受することもできます。
企業型よりもお得
企業型の場合のメリットとしては次の4つが挙げられます。
- 本人の所得税が節税できる
- 確定拠出年金の手数料は会社負担してくれる
- 本人負担分の社会保険料が下がる
- 会社負担分の社会保険料が下がる
メリットの4つ目に注目してほしいのですが、社会保険料は本人と会社が折半して支払いをしています。そのため、会社の負担分も下がります。
しかし、この社会保険料が下がるという仕組みは、「保険料の基礎額となる標準報酬月額が下がる」ことによるものです。
さて、前職の確定拠出年金のときの説明の際に、「デメリットとしては標準報酬が下がり、標準報酬で計算される公的年金などの受取額が減ることがある」と聞いたことはありませんか?
実は、保険料の支払いが少なくなる一方、将来受け取れる年金額もそれに応じて下がってしまうのです。
一方でiDecoの場合は、給料とは別に計算されるために標準報酬には関ありません。年末調整のときに、生命保険の掛け金と同じように、確定拠出分として証明書を提出します。
そのため、社会保険料が下がるメリットはありませんが、公的年金額などが下がるというデメリットもありません。
企業型からiDecoへ移管する具体的な手続き方法
企業型からiDecoへ移管する具体的な手続きは、3ステップです。
- iDecoを開設する金融機関を決める
- 金融機関に必要書類(個人型年金加入申出書、個人別管理資産移換依頼書など)を送る
- 配達記録郵便を受け取る
ポイントとしては、金融機関選びです。金融機関が決まれば、その後の手続きや案内は金融機関が行ってくれるので、それに従って申し込みをするだけです。
金融機関の選び方としては、手数料が最も安いところを選択することです。
また、iDecoでの積立てる商品として、定期預金などではなく、投資商品を検討しているときは、なるべく商品数が多い金融機関を選ぶことがポイントです。
おすすめするiDecoを取り扱う金融機関を徹底比較
iDecoを取り扱う金融機関の比較ポイントとしては、かかる手数料と投資商品の本数です。
iDecoで直接かかる手数料の種類は次の通りです。
口座開設する金融機関 |
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信託銀行 |
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国民年金基金連合会 (退職から6か月以内に移換したとき) |
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国民年金基金連合会 (退職から6か月以降に移換したとき) |
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口座開設する金融機関の手数料以外は、どこを選択しても一緒となりますので、比較は金融機関の手数料で行います。
【第1位】SBI証券
- 商品数:67本(元本保証4本、投資信託など63本)
- 加入時・移換時手数料:無料
- 口座管理手数料:運用管理手数料:無料
- 給付事務手数料:432円
【第2位】楽天証券
- 商品数:28本(元本保証1本、投資信託など27本)
- 加入時・移換時手数料:無料
- 口座管理手数料:運用管理手数料:無料
- 給付事務手数料:432円
【第3位】マネックス証券
- 商品数:22本(元本保証1本、投資信託など21本)
- 加入時・移換時手数料:無料
- 口座管理手数料:運用管理手数料:無料
- 給付事務手数料:432円
まとめ
放置している確定拠出年金はすぐに手続きをして脱退一時金を受け取るか、iDecoへの移換をすべきです。こうしている間にも余計な手数料が徴収され続けています。
確定拠出年金は将来のためのお金を用意するツールです。
いまが大変だから将来のことが考えられないのは分からないこともないのですが、そのままいくとずっと大変なままです。
「iDecoに移換しておいてよかった」と後悔しないためにも、まずはイデコの資料を取り寄せてみてはいかがでしょうか。